一単位落ちて天下の春を知る
成績表の発表を見て大学生は春休みの到来を実感する、という意味の故事成語です。
長い春休みがやってきました。己の足で見知らぬ土地を踏み、見聞を広めるという大学生の本分を果たさねば。
前々から四国に渡ってバイクを走らせたいと考えていましたが、ようやくその時がやってまいりました。
1週間ほどかけてぐるっと四国を周り、橋で中国地方へと渡ってホームタウン京都に戻る計画です。毎日長々とツーリング報告を書いていると途中で力尽きてしまうので、数日ごとにまとめて記事を書こうと思います。
今回は海編。京都を出発し、大阪・兵庫〜香川〜徳島〜高知までの旅路です。一連の移動はほぼ海岸沿いでした。真っ青な海と空の間を駆け抜ける赤い彗星ブンブン1号をお送りします。
2022.02.20【京都-神戸】
スケジュール
出発 03:04
到着 18:25
総移動距離 181.3km
日記
当初の計画では明石海峡大橋と大鳴門橋を渡って四国に上陸してみたいな、と漠然と考えてました。天気予報によると当日の明石海峡大橋は朝7:00以降風速15mを超える暴風。風に煽られて海に落下し鯛の餌になる未来しか見えません。だったら風が吹き始める7時前に渡ってやるぜ、という天才的な計画を思いつき実行に移します。人生2度目の真夜中走行です。
唐突ですが、私は神様の存在を信じています。小学生の頃、留守番中家に来た宗教勧誘のお姉様方に「神はいる」と力説したことがあるほどです。young ひろみ曰く「この世はしかるべき時にしかるべき巡り合わせが来るようにできており、すべて神の掌の上で踊っているにすぎないのである」と。この日も神からの思し召しが。出発早々謎に壊れるツーリングバッグ、反応しないGPS、寒すぎて動かない指先、ついでに睡眠時間3時間……etc. 神に「橋を渡るな」と首根っこを掴まれています。無理に押し切れば死ぬと判断したため太陽と入れ替わりでネカフェに身を隠し、体勢を立て直すことに。
結局この日は神戸周辺を探索し、翌朝フェリーで四国に渡るプランに変更しました。計画崩れるの早すぎ。
明石市立天文科学館
明石市の標準時子午線上に位置する科学館。
入館料は大人700円ですが、高校生以下が無料。すごい。
2〜4階が展示室、13・14階が展望室になっています。空白の階はすべて階段。エレベーターはあるにはあるのですが、科学館側が階段利用を強く推奨しています。健康推進ド畜生科学館に改名しろ。
息も絶え絶えたどり着いた展望室は360度ガラス張りで明石市内を一望できました。
科学館の展示についてですが、天文に関するエリアと時計・時間に関するエリアの大きく二つに分かれています。
個人的には時計・時間に関するエリアがはじめて知ることだらけでとても面白かったです。1秒ってセシウム133原子が安定状態から不安定状態へ遷移するのに必要な電波の周波数で定義されているんですって。天体の運動は関係ないのか。正確には「セシウム133原子の基底状態の2つの超微細準位間の遷移に対応する放射の9192631770周期の継続時間」(詳細はNICTホームページ参照:https://www2.nict.go.jp/sts/afs/One-Second.html)。1秒の定義なんて考えたこともありませんでした。時間に関する説明展示ってなかなか見ないので一見の価値があると思います。
天文エリアでは(なるほどわからん)とポヤポヤしてると学芸員さんが話しかけてくれて丁寧に解説してくれました。フラウンホーファー線ってご存知でしょうか。光のスペクトルの中に時折生じる黒い暗線のことです。特定の原子・分子が決まった波長の光を吸収することで発生します。これだけ聞いても何がすごいのかよくわからないのですが、この線のズレから天体の移動(近づいている/遠さかっている)がわかるそうです。ズレの原理はドップラー効果による波の伸縮で説明がつくらしい。なるほどそう繋がるか。天体って基本的に直接触れたりできないから、あの手この手、本当に様々なアプローチ方法で活動を把握しますよね。媒介手段の多さに驚かされます。学芸員さんの解説にひたすら「はえー」を繰り返すばかり。宇宙科学は未知を解明するための人間の飽くなき努力・好奇心・探究心の塊って感じがして最高にかっこいいです。おおきくなったらうちゅうかがくしゃになりたいな。
最後にプラネタリウム。45分の上映の中には夜空を見上げたくなる小噺がたくさんありました。宇宙科学はありのままの宇宙を知るために真理に近づこうとする泥臭さを感じますが、プラネタリウムや星座の神話は綺麗なものを遠くから眺め、綺麗なまま完結させようとする身勝手なロマンを感じますね。どっちも褒めてます。
天文科学館、特別大規模な施設ではないのですが大満足のボリュームでした。明石市に訪問することがあれば立ち寄ってみると楽しいと思います。
兵庫県内の走行
神戸近辺を走っていると、急勾配の上に綺麗な新興住宅地という形をよく見るような気がします。市街地のギリギリまで山が迫り出しているイメージ。なので海岸から少し離れるだけで急傾斜とカーブが連続します。端的に言うと公道がジェットコースター。楽しいけどちょっとスリルがありました。
2022.02.21【神戸-香川-徳島-室戸岬】
スケジュール
出発 05:20
到着 20:01
総移動距離 333.7km(フェリー含む)
日記
ジャンボフェリー
公式HPを見ていただくとわかる、香川サイドふざけすぎフェリー。
香川(高松)の原形がなくてちょっと引いた。うどんのゴリ押しなんて短命に終わるわよ。太くて短いんだから。
そんなジャンボフェリーですが船内は快適です。食堂で讃岐うどんが食べられます。小豆島を経由し、5時間弱かけて高松に向かいます。
徳島駅周辺
ジャンボフェリーから降りて香川を通過、徳島を経由して室戸岬まで向かいます。徳島は昼食のために立ち寄りました。
どちらも徳島の郷土料理です。徳島丼はガッツリタレの味がして美味、そば米汁は優しい味でした。
お腹を満たしたところで徳島駅周辺を少し散策でもしようかと思ったのですがびっくりするほど何もない。駅前アーケード街のほとんどがシャッターを下ろしており、閑散としすぎていて怖くなったくらいです。大丈夫か徳島。
室戸岬
徳島から室戸岬へと抜けていきます。室戸岬は車通りが少なくカーブは緩やか、無限にアクセルが回せる道です。気持ち良すぎて室戸乃風結成したくなっちゃうわね。
室戸グルメといえばキンメ丼。「室戸沖のキンメダイの照り焼きと地魚の刺身を載せる」「キンメダイのアラでとった出し汁をつける」というのが定義らしいです。さっきから写真を撮るときに汁物の蓋を開け損ねていることに関しては大目に見てください。
照り焼きは身が柔らかく、刺身は肉厚で食べ応えがあります。主張の強すぎない味で、1食分のタンパク質すべてがキンメダイだったにもかかわらず全く飽きませんでした。
2022.02.22【室戸岬-高知市】
スケジュール
出発 09:03
到着 21:01
総移動距離 135.7km
日記
むろと廃校水族館
快晴の中スタートです。朝の室戸岬を突っ走ります。
到着。旧室戸市立椎名小学校を改修して2018年にオープンした水族館です。
最近は旅先で水族館に行くのにハマっています。ミーハーだから白い砂のアクアトープの影響をモロに受けました。美少女お仕事アニメ増えて。
入館料は大人600円。水族館でこれは安い。
館内(校内?)は小学校の教室にノスタルジーを感じると共に水族館のワクワクも楽しめます。跳び箱やプロジェクターが水槽になってたり、地元高校生が勝手に作って送りつけた廃校水族館の歌が延々とかかっていたり、やりたい放題です。
もちろん通常の展示もしています。
今回、ハナミノカサゴとミノカサゴの違いを見分けられるようになりました。顎下まで縞模様が入ってるのはハナミノ。腹が白いのはミノ。見た目が派手でインパクトがあるのですぐ名前を覚えられました。
海洋ゴミを「海の新しい仲間」と言い、一室まるまる使って展示するなどエッジも効いています。写真のメッセージにある通り、皮肉の意図はないようです。水槽内にビニールや釣り糸など、ただ海洋ゴミが漂っているだけの異様な展示室でした(水槽の写真撮り忘れた)。
順路の最後には屋外プール水槽があります。魚や亀が泳いでいますが数は少なく密度は低いです。浅いプールに耐えられる生物があまりいないのでしょうか。
廃校水族館にはイルカやペンギンのような花形の生き物はおらず、展示の種類も普通の水族館よりは少なめで地味ですが十分な満足感があります。室戸おすすめ観光スポットです。
琴平神社
猫がいることで有名な神社です。敷地内は地域猫がいっぱい。神社自体は小さくて目立った特徴はありません。参拝していると神社の主が現れました。
平伏しながら腕を伸ばしましたが触らせてはいただけず。しかし撮影はOKなようで良い表情を見せてくれました。
猫の日ミッション、クリア。
坂本龍馬記念館
高知南岸、太平洋を臨む桂浜に位置する坂本龍馬記念館。
外観が個性的です。大胆に海に突き出したデザインが素敵。この出っ張った部分は館内の展望スペースになっています。高知の有名建築の一つです。
シェイクハンド龍馬がお出迎え。
常設展では坂本龍馬の手記が数多く公開されています。手紙っていいですよね。教科書で見るような成し遂げた業績ではなく、人間味あるありのままの姿が伺えるので。展示からは坂本龍馬のひょうきんさが伺えます。出家したがっていた姉・乙女への手紙の中で「屁を出すくらい勢いよくやってみぃ(意訳)」と言ってみたりだとか「男のタマを狙え、タマを(意訳)」と忠告したりだとか、真面目な文章の中に時折顔を出すくだらなさに笑ってしまいます。
展示物は人物そのものに焦点を当てたものが多く、坂本龍馬の人物像に彩りを与える楽しい構成になっていました。
また、行き帰りに走った桂浜沿岸部はドライブにちょうどいい気持ちの良い道路でした。
ひろめ市場
高知の新鮮な食材を堪能できる市場です。お店がたくさん入っていてどれにしようか迷っちゃいます。とはいえコロナにより半数くらいは閉まっていました。
しかしお客さんが引くほど多い。席の確保に苦労しました。通常時はどうなるんだこれ。
今回は鰹のたたきとウツボの唐揚げを注文しました。
鰹のたたきは想像通り美味しくて文句なしです。ウツボははじめて食べたんですけど脂身やコラーゲンのようなブヨブヨとした食感で、味の方はあっさりもたれない、絶妙な食べ物でした。
海編終了。次は山編
無事に前半の海編を乗り切りました。次回は山編。
・ブンブン1号ご機嫌ななめ
・ブンブン1号とはじめての雪
・生身でイノシシは流石にやばい
でお送りします。