ひろみバイクライフ

バイクに乗ってブンブン言わせます

2022.07.18_大原三千院

「今ここ」以外のどこか、未だ定まらぬものに心動かされることを若さと呼ぶのだと私は考えています。そしてその定まらぬものの輪郭が曖昧であればあるほど期待や恐怖や好奇心といった感情は苛烈になるものです。

このような意味においてバイクに乗っている時の自分はとても若いです。即ち目的地の輪郭が曖昧である、より具体的に言えば距離が遠ければ遠いほど楽しいという非常に単純な物差しでバイクに乗っています。若くて愚かです。

しかしこの先取り的な生き方は前方に注意を払いすぎるあまり今ここの現実に目を向けられないという弱さを持っています。前方不注意ならぬ前方過注意とでも呼べば良いのでしょうか。

つまり私は遠くに行くことを渇望するあまり京都市内をあまり走っていなかったのです。今回は京都市内、大原三千院に行ってきました。

スケジュール

2022年7月18日(月)

出発 8:45
到着 14:28

ルート

〈目的地〉

三千院

goo.gl

〈走行ルート〉

日記

⓪大原散歩

京都市内より体感2℃くらい涼しい大原の里。到着すると名物の紫蘇畑が早速出迎えてくれました。

山奥の地形が他の品種との交配を防いでいる

見た目が赤い紫蘇は、赤紫蘇(Perilla frutescens var. crispa f. purpurea)とちりめん紫蘇(Perilla frutescens var. crispa f.crispa)の2種類があって、前者は葉が平たく、後者は葉が縮れて少しくしゃっとなっています。大原で栽培されているのは後者のちりめん種らしいです。

三千院までの緩やかな坂道を呂川という小さな川に沿って10分ほど登っていきます。

(1枚目)道端の小さな趣向に涼を感じる(2枚目)神経が図太くて逆に許せる商売

大原の里には呂川に加え、律川も流れており、この「呂」と「律」は声明(仏教音楽)の音階の一つとなっています。ここから「呂律がまわらない」という表現が生まれたそうです。

川沿いのガードレールに小さな竹筒がくくりつけられてある

数メートルおきの等間隔で並ぶこちらの竹筒は道端で販売されているきゅうり棒の串入れになっています。途中きゅうり棒を歩きながら頬張っていましたが、素朴ながらも塩味のきいたきゅうりが美味しかったです。

①宝泉院

宝泉院は天台宗勝林院(後で紹介します)塔頭(高僧の死後、弟子がその徳を敬って建てる小院)として創建されました。

質素な佇まい。大人800円、中・高700円、小600円

拝観には茶菓がついてきます。

額縁庭園を眺めながら茶をしばく

額縁庭園、絵画の額縁というより映画のスクリーンのようなダイナミックさがありますね。千利休が極めた茶道は狭い茶室の中で質素に慎ましく自然と向き合う営みだと思うのですが、この豪快さはそれとは対照的に映えを意識した現代にも刺さる仕様だなあと思います。圧巻の光景に立ち去り難いという意から、この庭は盤桓庭と呼ばれるそうです。

宝泉院には歩き回れる庭園もあって、そこには長野の天狗山(標高1800m)から持ってきた亀甲石や東北から持ってきた念珠石が鎮座しています。どこか外界と隔絶されたような、神秘的な雰囲気漂うお庭でした。

②勝林院

背丈ほどの蓮の葉が印象的な外観

約250年前に火災から復興して以降、建て替えを行なっていないという超ご高齢の本堂です。杮葺の屋根が相当に傷んでおり、トタンで応急処置がしてあります。

ここでは「どうすれば悟りの境地に入ることができるか」といったような12の問いに天台宗や浄土宗の高僧たちが答える、いわゆる大原問答が行われていたそうです。

本尊は阿弥陀如来。大原問答の際、手から光を放って念仏による極楽往生の正しさを証明したことから「証拠の阿弥陀如来」と呼ばれているそうです。ちょっとつり目気味で口元の髭がキュートでした。

三千院

石垣で囲まれた、お城のような迫力のある御殿門を潜って中に入ります。

客殿からは庭園が見えるのですが、客殿の真っ赤な絨毯と木々の新緑のコントラストがとても綺麗でした。

華やかな客殿を去り少しお庭を歩くと、質素な見た目をした御堂が現れます。これは往生極楽院と言い、三千院の本堂に相当する建物です。往生極楽院はもともと三千院とは関係がない御堂でしたが、明治維新後大原に移転してきた三千院に取り込まれ、現在の形になったのだとか。

内部には阿弥陀三尊像が安置されています。大きな仏像をなんとか建物内に収めるため、船底をひっくり返したような屋根の形をしていました。阿弥陀如来の光背のてっぺんと天井がほぼくっついていて本当にギリギリで設計したのがよくわかります。

御堂の中ではお坊さんが往生極楽院にまつわる小噺を10分少々してくださいました。お坊さんってお話がうまいですよね。必須スキルなのでしょうか。語りに熱量も力もこもっていないにもかかわらず、仏教の世界観をストンと納得させてしまうところに技術を感じます。

三千院の敷地は広く、中にはあじさい苑もありました。7月後半でしたが気温が低いためかまだ華やかに彩られていました。

7月なのにまだ咲いてる

三千院は仏教的に意義のある場所であると同時に、綺麗な庭園を歩き回るだけでも楽しい、ライトに楽しめる場所でした。

土井志ば漬本舗 本店

三千院からバイクで5分ほど下ったところにある老舗の漬物屋さんです。
漬物が売ってある店舗にレストランが併設されています。

天ぷら御膳with漬物ビュッフェ。個人的には大根が好きだった。

漬物とご飯は食べ放題です。御膳の天ぷらは漬物を揚げているので他ではなかなか食べられないお味でした。よく浸かったナスの味と食感が最高。

お腹が満たされるのはさることながら塩分もしっかり補給できました。

総括

横を通るたびに毎度「いつか行こう」と思っていたのでようやくそのいつかが達成できてよかったです。ちょうどいい人の量、観光物の量で、里山の景色と相まってのんびり穏やかに歩くことができます。無駄にはしゃいでいない感じがgood

バイクや車がないとなかなか行く気分になれない立地ですが避暑にもちょうどいいので夏の間に是非。