他人に対し、努めて寛容であろうと意識して生きています。しかし目標はあくまで目標であり、やはり受け入れ難い観念というものが私の中にいくつか存在します。
そのうちの一つが「田舎には田舎のいいところがある」というようなマスカルチャーに対するある種の反論です。都会の波に乗ることができなかった負け犬の遠吠えだと思っています。
この考えを素直に受け入れられない理由は非常に簡単です。私が都会賛美の文句にあてられて田舎の地元を出たから。田舎の価値を認めることは、田舎を見下して上京した自分の信条に異議を唱えることになってしまう。
しかしもしかしたら本当に都会の軸では測れない良いものが田舎にはあるのかもしれない。都会の文化と比較してもそこに貴賤がないのだとしたら。そんな疑念が湧き上がってくる機会がないわけではありません。そしてこれらの疑念や多様な価値を素直に認められない自分の未熟さに時折焦りを感じています。
スケジュール
2022年6月9日(木)-11日(土)
ルート
〈目的地〉
笠岡ベイファーム
飛島
〈走行ルート〉
日記
⓪往路
今回はスケジュールに余裕がないため高速道路で向かいます。しかし淡々と進むだけではバイク移動の意義が薄れてしまう。そこで「立ち寄ったSAで何か一つ買って食べる」を努力目標に掲げ運転することにしました。
立ち寄ったのは宝塚北SA、龍野西SA、吉備SAの3つ。
宝塚北は2018年にオープンしたばかり、近畿最大級の上下線SAです。田舎のちょっとしたショッピングセンターみたいな規模感。ここでは宝塚はちみつヨゴリーノを購入。
ヨゴリーノとはイタリア発祥のヨーグルトジェラートです。あっさりとしていながらも甘みを感じて美味しい。純国産宝塚はちみつとの相性も抜群です。
続いて龍野西。
ここはフードコートとお土産屋さんが併設されているよくあるテンプレSAです。ご当地フードはないものかと探索しましたがめぼしいものは見当たらずスルーしました。努力目標達成ならず。
最後に吉備。岡山の果物や農産加工品を取り扱ったおしゃれマルシェがあるきれいなSAです。ここではクロモジという植物のジェラートを購入しました。ジェラートの華やかなショーケースって見ていて楽しいので好きです。
クロモジはクスノキ科の落葉低木です。枝は高級爪楊枝として和菓子に添えられるなどして利用されています。また、あまりポピュラーではありませんが葉はお茶として飲まれることもあります。クロモジジェラートはちょっとスパイシーなお茶の味で、ジェラートの乳成分と相まってチャイのような風味がしました。甘すぎない感じがgood。
①笠岡市内
笠岡市は岡山と広島の境目に位置する、人口約4万6千人の小さな街です(Retrieved from:https://www.city.kasaoka.okayama.jp/soshiki/16/1698.html)。車で30分ほど、鉄道では一駅で隣接する工業都市・福山市にアクセスできるベッドタウンの役割を果たしています。
高速を降りて向かったのは笠岡湾干拓地の広大な平野の中に位置する道の駅笠岡ベイファーム 。ただただ真っ直ぐで人工的な碁盤目状の道路を走り抜けることができ、道の駅に至るまでの道中もなかなかに楽しいです。
笠岡の土地が干拓するに至ったのは土地と水を確保するためで、国営事業として平成2年に完工しています(参考:https://suido-ishizue.jp/kokuei/chushikoku/Prefectures/3302/3302.html)。
笠岡ベイファームの見所は菜の花、ポピー、ひまわりなど季節にあった植物が植わっている広大なお花畑です。しかし足を運んだ6月はちょうどひまわりの植え付け作業中。もの寂しいまっさらな畑を眺めて去りました。
道の駅を後にして走り甲斐のあるツーリングスポットに向かいます。海岸線をなぞるように走る県道195号線は車通りがまばらで景色もよく、良い道でした。
この日は笠岡駅近くに宿泊。翌日の目的地は離島です。
②飛島
笠岡市の港から船で40分のところにある小さな島です。本土と離島を結ぶ船は一日4便しかありません。自然が豊かで時間の流れが穏やかな"the 離島"です。
今回の笠岡来訪目的はこの島でのお仕事(的な用事)。こちらは午前中のうちにさっさと済ませてしまって、島を軽くお散歩しました。
海辺あるあると言えば恋人の聖地。皆様こぞって鐘を鳴らしたり南京錠を掛けたがりますよね。全国にどれだけあるのか気になったので戯れに日本中の恋人岬をマッピングしてみました。参考にしてみてください(「恋人岬」という検索ワードの該当結果のみ掲載)。
日本国内に計31ヶ所あるそうです。東日本太平洋側と瀬戸内に集中している傾向が見られます。意外にも沖縄や北海道のような観光地にはないんですね。
散歩を終えてもなお時間が余ったので、帰りの船が来るまで牡蠣打ちをすることになりました。
↓この先集合体恐怖症及びゴキブリに類似する動物が苦手な方は見ないでください。
砂浜に打ち上げられた貝殻やシーグラスに気を取られ、あちこち蛇行しながら牡蠣が獲れる岩場を目指します。
不思議な形状の漂流物にこれは何の貝殻だろうと頭を傾げていると地元の方が「貝って何回も言ってごらん」とヒントをくれました。
そう、イカの甲です。普段口にしているのに可食部以外は案外知らないものですね。地元の方は当然のように知っていて私には知らないことがある、という事実になんだか少し悔しくなりました。
海岸を抜けて奥まった岩場に着くとフナムシの大群が一斉にお出迎えしてくれました。
上の写真からもわかる通りこの情報密度の高い岩場から岩牡蠣を探すのはかなりの難易度です。素人目にはどれが牡蠣でどれが岩なのか区別がつきません。ちなみに写真手前の白い部分は本体を剥ぎ取られた牡蠣の抜け殻です。手慣れた地元の方は岩牡蠣を正確に発見してどんどん獲っていく一方で私は1個しか発見できませんでした。
牡蠣以外のムール貝やカメノテなどといった貝も発見次第回収していきます。
船で帰って戦利品を酒蒸しにしたものがこちら。
カメノテは出汁をとって味噌汁になりました。いざ実食。
岩牡蠣は普段スーパーなどで目にする真牡蠣とは別種の牡蠣で、大振りの中身が特徴です。真牡蠣の旬は11-4月である一方、岩牡蠣の旬は6-8月となっています。また、真牡蠣は養殖ものがほとんどで1、2年ほどで収穫できますが、岩牡蠣は天然と養殖両方あり、生育には3年前後要するようです。
岩牡蠣は見た目とは裏腹に磯臭さは皆無で歯応えもあって、柔らかい食感の真牡蠣とは全く違う印象を受けました。味噌汁にしたカメノテは蟹だか海老だか貝だか、魚介類の美味しいところを全部詰め込んだ味がしました。あまりお店では見られませんが場所によっては高級食材として流通しているのだとか。
美味しい食材がそこかしこで獲れるのは島の特権ですね。
総括
総移動距離:537.3km(往路+復路)
田舎ののんびりとした空気をしっかり楽しんで帰ってきました。田舎はいいぞ!田舎に住みたい!と宣言するまでには至りませんが、地元で培われた独自の価値体系があって、それは都会賛美の軸とは別物としてリスペクトしなければならないと感じました。
ご飯がおいしいっていいですよね。